スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
- 2020.01.10 Friday
- -
- -
- -
- -
- by スポンサードリンク
葉月くんの「こころ」の中をのぞいてみよう・・
--------------------------------------------------
■ 三 こころ
--------------------------------------------------
―部活が終わるとネットカフェへ。週に一度はいつもこのコースだ。
今日からサツキ、葉月、弥生に、図師が加わって四人となった。
チャットができるソフトをインストールして、使い方を説明して、IDやパスワードの取得など詳しく教え合う。葉月はネット遊びはお手のもの。図師もくわしい。サツキは飲み込みが早い。それから、弥生、分かっても分からなくても、付き合いよく調子を合わせた。
葉月のすばやいキーボード操作と弥生のキーラ・ナイトレイ級スマイルだった。
気のきいた発言をする図師と悠然たる態度のサツキ。
それは美しい絵巻物にして金の装丁を施し宝の箱に大切にそっと保存しておきたくなる程である。
―にわかに、流れるバラード音楽。耳を澄ますと心地よいメロディーライン。リードボーカルが、彼女の言葉は嘘かもしれない、と疑いの気持ちを切なく歌えば、バックコーラスが、はやしたてるように、彼女の言ったことだ、と爽やかな歌声で相手の気持ちを掻き立てる。鈴のパーカッション、それがリズムに合わせて小気味よく入る。カフェじゃなく星空の下ならば、うっとりとろけてしまうだろう。
と、誰かの着メロが鳴る。図師が確かめるとメールだった。
そして、図師は用事があるから一足先に帰ると言う。
「指輪の子か……?」と、サツキが探るように美しく大きな目を見開くと、
「彼女はいないし持ちたいとも思わない」と、図師は言ってのけた。
「それってデタラメ」
「今読んでる小説の主人公のセリフだよ。そんな風に超越できたらなあ。けれどそんなこと言う端から陰でこっそり不倫の恋愛してる。その彼女から手紙が来ないといって嘆いたりしながら」
「へえ。図師くんにはメールが来たわけだ」
「じゃねっ! 空手の練習」
「はーい」
サツキたちは図師を見送った。
―しばらく後、サツキと弥生が帰ったところで葉月一人カフェに残った。